まず何よりも被害に遭われてしまった方にはお悔やみ申し上げます。
中国では日本では考えられないペースで起こるこうした建築事故。
もちろん絶対数がそもそも多いこともありますが、あまりにも悲惨な事件に目を覆うばかりです。
建築工程にあたって、中国でよく言われるのが、消防審査が厳しいということです。
私も過去に何度か目の当たりにしましたが、一つの建築物が完成に至るまでに何度か消防検査が行われます。
消防検査が行われる場合は多くの施主さんは緊張感を持ちます。
それは当然現場サイドにも何らかの形で伝わるため、作業員さんたちもアチコチで噂をしながら作業に取り掛かるのです。
その消防検査なのですが、基本的にはゼネコンなり施主さんが直接消防局へ審査の依頼をします。
抜き打ちとかではありませんが、一般的にそれらはかなり傲慢な態度であり、間もなくオープンを迎えるような新築の建築物に土足で上がり込むなどもしばしば。
消防審査を通過するにはいくつかの大きな問題があるようで、その代表とされるのが口利き、場合によっては直接的な賄賂や接待です。
また、ある施設の開業前には消防検査の予約が取れず、開業できない状態がしばらく続く、というのも聞いたことがあります。
なぜ消防検査でこんなにも緊張感を持つのか、それは大型のビルが多い中国において火災による大きな被害を被るため、法的にも厳しく制限されていることが最も大きな理由ですが、それ以外にも人為的な理由があるようです。
それは実際に火災が起きてしまった場合に、その建築物の承認をした人物に何らかの罰則が与えられるというもの。
具体的には聞いたことがありませんが、相当な賠償責任が生じる可能性があるそうで、承認したというサインを書きたがらないのと似ています。
これは別の話になってしまいますが、サインをしたがらない、サインをした人物に責任論を被せるというのは、支払いの承認をする財務担当者や現場の荷受け担当者などにも言えることです。
冒頭の話に戻りますが、では構造についての検査はあるのか、というと、少なくとも私は現場サイドでそのような話を聞いたことがありません。
しかし、設計についての要求は日本と同じようにあり、構造設計を行うことができるのは大手企業や国営の設計院と呼ばれる設計会社のみです。
ここまでまとめると、何となくお分かりになるかもしれませんが、建築倒壊事故が起きた際には責任が問われるのは、その構造を担当した設計院、もしくは施工会社となるはずなのですが、それらは大手だったり国営企業であったりな訳です。
非難となることが公になりづらく、くり返し起こってしまうのは、そうした背景が理由である気がしてなりません。