またまた飛び込んできた日本の大手家電製造メーカーと中国企業の提携です。
大手のテレビ製造メーカーで、単独で生き残っているのは、これでとソニーくらいでしょうか。
報道や世論ではもう日本のものづくり技術が世界で通用しなくなったかのように言われてしまいそうですが、中国企業が力を相当つけていることも無視できないのではないでしょうか。
私は業界の人間ではないので分かりかねますが、ほんの数年前まで中国では、パナソニック(中国では松下の呼び名がそのまま)やシャープの家電製品は、かなりの高級品だという概念がかなり強かったと思います。
業務提携とはいえ、実質的な生産の2,3割程度をTCLに製造委託するということなので、パナソニック側としては業績の上向かない事業について、製造の合理化をしたという位置づけでしょう。
中国企業がそれを受託するだけの製造力をつけていることの証左で、相対的に日本のメーカーの苦戦が続いているということが言えるのではないでしょうか。
予想されるに様々な要因があるのでしょうが、これはあくまで私個人の感想ですが、中国系企業が全体的に有するスピード感、費用対効果の捉え方に大きな差異があるように感じます。
スピード感は言わずもがな、以前もブログで書いたラッキーコーヒー(瑞幸咖啡)のように、投資の集中展開によるそのスピードは日本では考えられないものです。
その原因の一つには借入金利、が挙げられるように思います。
日本の場合、投資の際に抱える借入額や金利に基づいて10年、20年スパンで減価償却、借入返済を考えることが一般的ですが、中国では日本に比べて借入金利がかなり大きな費用となるため、早ければ2年、3年、投資回収は早ければ早いほど良い、早期返済が至上命題です。
大手企業や国営企業であっても同じような傾向があるでしょうから、一般的に日本企業よりは成果に対するスピード感が求められることは間違いなく、市場の常識として日本よりシビアでしょう。
従って当然のように中国での費用対効果の捉え方は、その業務拡大の業績一本に絞られる傾向が強い、とも言えそうです。
例えばもう一つの話題にもなっていた、蘇寧グループのサッカークラブ経営(江蘇FC)に突如として暗雲が立ち込めたのも、同様の理由によると考えられます。
チーム名の変更を余儀なくされるなどの様々なバックグラウンド的な失敗要因はあれど、結果的に費用対効果が悪すぎると考えられ、金利も重くのしかかり、すぐに売却へと方針が転換される良くも悪くもそのスピード感です。
業績にシビアと言えば調子がいいのですが、実際には行き当たりばったり、ともいえるのが中国企業の課題です。
シビアさという点では、日本企業はこの投資が合理的かと判断するまでの慎重さが一般的な中国企業よりもシビアでしょう。
以前脳科学者の方とお話をしたときにあったのが、日本人には「失敗を極端に恐れる脳の遺伝子的構造」であるということです。
これは逆に捉えれば、失敗をしないための準備に事欠かないということで、沈着冷静、慎重さが一般的な日本企業の良さでもあり、相対的に見たときのチャレンジ精神の欠如や、結果としてチャンスを逃してしまうという欠点でもあるかもしれません。
冒頭の話に戻ると、どう捉えても日本の家電製造メーカーの【現状】は、明らかな逆風です。
しかし一方でハイアールの三洋白物家電部門の買収、東芝のハイセンスへのテレビ事業売却でも、中国企業も思ったような結果は残せていません。
シャープを買収した鴻海も今のところ明確な結果には結びつけられていません。
今回の提携や中国企業による日本メーカーの部門買収等の一連の流れで言えるのは、今のところ中国企業が想定以上の金額を提示するため、日本側としては収益になると見越した損得では拒否することが難しく、しかし中国側にとっても投資額に見合う結果には結びついていないとなるのではないでしょうか。
ですから、日本企業としては前向きな経営状況とは言えないにしても、決して後ろ向きになるような事例でもないのかもしれません。
問題は今後です。
これからもこうした動きが続くのか、続くとすれば中国側の提示オファーが相場より低くなる可能性が高く、また日本の製造メーカーが現状は力を温存することで、今後何らかの業界で逆襲を図ることができるのか。
是非日本企業には頑張ってもらいたいところです。