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2021-01-14
耐久性とイニシャルとランニングコスト。

またまた先回の記事からの流れとなりますが、中国と日本でのイニシャルコストとランニングコストの相互関係で非常に興味深い経験がありましたので記載したいと思います。

現在とある設備の営業代行活動を受託させていただいていますが、その際の営業での一幕を簡単に紹介したいと思います。

信頼関係がない間柄での営業初動で大事なのは、売り急がないこと、根拠を元に説明をして不必要なものを売りつけるような行為で信頼を損ねてはいけないのは性善説的ですが、日本でも中国でも同じです。

某所のレジャー施設のプロジェクトで井戸水があるため、それを使用したいというオーナーの強い要望がありました。

強い要望というよりは、当該プロジェクトは水をたくさん使うこともあり、水道代を何とか安くしたいという意思表示に私は感じていました。

問題はそれにかかわるイニシャルコスト、井戸水と言っても地下の泥水でもあり、それを利用するには様々なコストも必要となるため、単純に水道水が必要ないから、と手放しで喜べない場合もあるのです。

水質分析を元に日本企業へ依頼をし、その井戸水を処理する設備に対するイニシャルコスト、またそれに対する維持費、要するに設備へのランニングコストを計算しました。

確かに水道代の側面だけを見れば井戸水を利用することでランニングコストはかなり抑えられるものの、設備の維持費を考えると手間も増えるため、どちらがお得なのか判断しきれないような状況でした。

ランニングコストを重視するオーナーをどう説得するかでしたが、理論と根拠でそれらを説明すれば理解してくれるオーナーでもありましたので、資料を準備して説明に伺いました。

一通り説明するとオーナーはアッサリと井戸水の使用を諦めよう、と宣言しました。

その判断材料のカラクリこそが本日のテーマなのですが、投資回収と両コストの関係性こそが重要だったのです。

大まかな話にすると、例えば井戸水を使用して抑えられる水道代が年間10万元、設備のイニシャルコストが15万元、それにまつわる各種メンテナンス費用を年間7万元とします。

単純に計算をすると一年目はマイナス12万元、二年目でマイナス9万元、三年目で6万元、、、となり五年目でトントンという計算になります。

もちろん細かい側面で考えれば、税務的側面での減価償却の観点や、メンテナンス費用は老朽化に伴う取り換えなどによる費用増加も考えられますが、日本であれば十分考慮に値する計算にはなります。

しかし、中国人オーナーは机上の計算なので前後する可能性が十分あるにせよ、五年での投資回収は長すぎる、というのです。

以前にも紹介した通り、中国での投資には高額な金利が影響することもあって、プロジェクトの大小によるものの投資回収の理想は3、4年と言われます。

日本では唖然とされるような数値ですが、これは私の10年近い中国での経験でほぼ一貫しています。

実際には開業までのコストなどを含め詳細を紐解けば困難である現実はあるのですが、そうした彼らの根源にある基本的な理論に基づけば5年での投資回収が理想的ではないという判断と一瞬にして結びつくわけです。

この日本と中国の差はかなり現実的かつ具体的な差異であると分かりますし、ちょっと高いけど品質は良いという、うたい文句だけでは中国市場を勝ち抜けないという意味も、お分かりいただけるのではないでしょうか。