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2022-02-03
温浴施設における理想的なお風呂の水量。

中国では春節真っ最中です。

改めまして新年快楽!と言いたいところですが、現在日本におりまして、春節気分は中国だけでちょっと真面目にお風呂の話をしたいと思います。

□温浴施設にある浴槽の水深

100件近い温浴施設を体験した私が見てきた中国の温浴施設。

歴史があって古くからあるような古典的な中国式の温浴施設、天然温泉が湧くリゾート地にある温浴施設、様々ありますが、基本的に似たような作り、特徴があり、それでいて日本と違う点があります。

それは、まず水深です。

日本の温浴施設は浴槽の底にお尻をつけて、ちょうど肩の上が見え隠れするような高さが浴槽の水面になります。

よく言われるのが水深600mm、60cmとなっていて、概ね550~650程度の浴槽水深が一般的です。

浴槽周りは1段のステップが設けられていて、そこに座ればちょうどお腹の辺りになります。

ところが中国の温浴施設の浴槽は700~800程度とかなり深めな場合が多いです。

たった10cm、20cmの違いだと思われるかもしれませんが、これはかなり大きな違いです。

■中国の温浴施設の水深が深い理由 仮説1

中国のお風呂の水深が日本と比べて深い理由は定かではありません。

私は個人的に、主に2つの理由だと推察、仮説を立てました。

まずは単純に中国人の平均身長が日本に比べて高いこと、が考えられます。

ところが、中国の平均身長の統計を見ると、実際には2,3cm程度しか違わないようなのです。

街に出るととんでもない高身長の中国人の方を見かけたりしますが、平均的な度合いで言えばそれほど差がないようです。

もっとも日本人の平均身長は以前に比べ随分伸びたと指摘されますので、中国との平均身長差も縮まりましたが、もしかしたら現代の日本人の平均身長に対しての60cmという水深は、体感的にも浅くなっているのかもしれません。

また、欧米の温浴施設の浴槽も日本のように60cmではなく、中国と同じような水深をしています。

もし平均身長を考えて浴槽水深を考えるとしたら、日本の水深も少し深めに設定すべきかもしれません。

□中国の温浴施設の水深が深い理由 仮説2

もう一つの仮説は、お風呂に入るという行為と、プールに入るという行為が中国では似たような行為だと捉えられているということです。

実際に中国では水着を着てお風呂に入るというシステムが大変多く存在していますし、欧米でも同様のことが言えます。

日本でも観光地などで水着を着衣するような混浴露天風呂がありますが、かなりの少数派です。

お風呂に比べてプールは泳ぐという目的があるため、水深が深いものが多いのは当然です。

こちらもあくまで仮説であって、何が正しいのか、スタンダードとなった根源こそ分かりませんが、ただ一つ言えるのは(一般的に)浴槽水深が日中両国では明らかに異なるということです。

■水深が違うと何が変わるのか。

それぞれの国でそれぞれの楽しみ方があります。

日本のようにお尻を浴槽の底に沈ませて肩まで浸かるのもいいですし、半身の状態や周囲のステップに腰掛けて入るというのも、また悪くありません。

ただ、温浴施設のコンサルタントを名乗るからには、これ以上踏み込んで考えなければなりません。

それは、水深の違いによる運営コストの差です。

現在、弊社で最も多くご依頼をいただいて取り組んでいるのが、初期計画に対する運営コストの試算です。

計画段階の平面建築図に対して、実際の開業後にその水道代やガス代、所謂温浴施設の基本コストがどのくらい必要になるのか、を試算しています。

このコストに対して浴槽水深というのは大きく関わってくるのです。

□水深の違いによるコスト差

先述のように60cmと80cmの水深差で変わるのは、入浴体験をした際の感覚だけではありません。

同じプランの建築平面図があったとして、同じ面積の浴槽に対して、水深が60cmなのか80cmなのかでは必要な水量は、、

単純に80cm÷60cmで133.4%の運営コスト差が生まれます。

あくまで単純計算ではありますが、必要な水量が133.4%増えるということは、必要なコストがそれだけ比例して増える、ということでもあります。

浴槽水を入れ替えた時に水深60cmの場合、水道コストが1,000円/回かかるとして、水深80cmになると1,334円/回となる訳です。

仮に毎日換水したとすれば、水深60cmの浴槽の場合は1,000円 ✕ 365日 ≒ 365,000円/年

             水深80cmの浴槽の場合は1,334円 ✕ 365日 ≒ 486,910円/年

同じ広さの浴槽で、水深が変わるだけで実に124,910円/年間(もちろん133.4%増)、これだけの差になります。

ちなみに水深が深くなったところで同時に入浴できる人数の差は基本的には同じです。

繁忙期に利用者をより増やしたいのであれば、水深ではなく広さを変えるべきですね。(水深による体感の満足度はさておき)

■さらに他にもコスト差が。。。

ちなみに水深が深くなることで水道代以外にもガス代のコスト増にも繋がります。

しかも、水深が深くなることによるガス代のコスト増は、水道代のそれに比べて更に大きな差が生まれます。

難しい計算なので簡単に説明をしますが、例えば広さ10m2の浴槽があったとます。

60cmと80cmの水深では、それぞれ6m3と8m3の水量に違いが出ます。

水道代のときに説明したのと同じ比率の差が出ますが、さらにこれを40℃や42℃といった入浴に適した温度にする必要があります。

そこで水道代と同じように水深の違いで生まれるのがガス代です。

6m3のお湯を補給水として補給するのと、同じく8m3の浴槽に対するガス代は、先述の通り133.4%(理論値)程度のコスト差が生まれるわけです。

□ガス代は補給水の昇温に必要なコストだけではない

ところがガス代の場合、更に違いが生まれる部分があります。

それは、営業時間中に常時設定温度の温水に保つことによるものです。

先程のコスト増は補給水を昇温するためのものですが、これを更に設定した温度に保つための保温によるコスト差が生まれるわけです。

※ただし細かい話をすると、6m3の浴槽と8m3の浴槽を一定温度に保つためのコストは、133.4%増(理論値)ではありません。

 なぜなら水面積の(外気と接触する)部分が最も温度が低下しやすいからですが、これは細かい話ですので割愛します。

また、この保温するためのコストは、営業時間中常に必要となる、避けがたく、かつ重要なコストでもあります

■コストばかり考えて、ではいけませんが。。。

一つの『水深』という要素でコストのことばかり話してしまいましたが、実際にこれらの数値はあくまで理論上のものではあるものの、温浴施設にとっては、利用者数に関係なく必要な最低コストでもあります。

もちろんこれらは合理的なシステム構築により改善される部分でもあります。

そうした専門的な計画のために弊社が存在している訳でもありますが、多くの中国にある温浴施設のようにたくさんお客さんが来る(はずだ)!とか、見栄えが良いから大きくて深い浴槽がたくさんあったほうがいい!

といったような、どんぶり勘定ではいずれ施設として破綻が訪れるのも当然の話です。

計画段階から専門的で理論的なご提案や、建設的な施設づくりをお手伝いしていきたいと心より願っております。

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