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2020-09-09
減価償却への考え方。

中国の地方都市でそれなりに実力のある不動産デベロッパーの大きいプロジェクトの事業計画書を見せていただく機会がありました。

ところが驚くべき、というか予想はしていた実情が分かりました。

まず中国らしく表式がやたら煩雑な割に見づらいのは中国のベーシックではありますが、冒頭に書いたように減価償却、固定費や設備維持費などの捉え方が大きく欠如していると言わざる得ないものでした。

例えば大型エレベーター、中国でも年間点検が義務付けられていますが、そこにおいての点検費は2年目以降も反映されていません。

減価償却費も建築コストの判断が甘いことや、コンセプトが定まっていないことでメリハリのない、専門的とは言いがたい試算の仕方はもちろん、それをどうしてか3年で、しかも利息などの手数料が検討されていないことに驚きました。

維持費については通常設備にもよりますが、1年目よりも2年目、3年目と設備の消耗によるメンテナンスの費用が高くなることは当然ですが、これもほとんど検討されておらず10年間同額が計上されていました。

正直、中国の建築の傷み、設備の消耗は日本のそれとは比べ物になりません。

それを維持せずにどう3年で投資回収ができるのかと疑問を持たざるを得ないレベルのものなのですが、勝ち逃げというか儲かり逃げが許される移り変わりの早い中国ではそれも一つの手法とは言えるかもしれませんが。

特に減価償却の部分は私とてこのレベルの事業計画書の正誤を判断するには時間がかかってしまうのに、パッと見ただけで問題点がポンポン見つかるようではプロとしては失格です。

しかし不動産で財を成した中国の不動産事業者の傾向として、こうした明らかな無理、もしくは抜けのある事業計画書を元に進めている場合も多くあります。

挙句に立ち行かなくなれば3年で投資回収したなどと触れ込み売却に走るようなケースもあるのが実情です。

またこうした杜撰な事業計画書が成り立たないことで、資金繰りの策として、取引業者への支払いの遅延を生じさせたりと、負のスパイラルを生むことになるのです。

事業計画を細かくやったとしても、それ以上に移り変わりが早く、予想だにしないことが起きるのも中国でのリスクではありますが、積極的な穴の多い事業計画を元に即断をして強引に進めていくバイタリティは学ぶべきところでもあるかもしれませんが、それでも思わずあまりに参考にならない事業計画書にため息が出てしまいました。