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2021-07-20
業務範囲に縛られない管理。

先日のブログについて、問い合わせをいただきました。

一人一殺の業務ということで、中国ではより雇用契約書に重視した雇用の考え方が強いです。

設計部である、とされれば設計が自らの仕事であり、営業に同行させると場合によっては嫌がる傾向が強いのです。

それは温浴施設であっても同じ。

レジ担当、清掃担当、設備担当と事細かに部署なり業務内容が分別化されるのです。

日本の温浴施設ではバックヤードで洗濯をしていたアルバイトの方が機械室で塩素を投入したり、、、なんてシーンがありますが、中国ではなかなかお目にかかれません。

そういったことを記述したら、ではどうしたらその一人一業務の体制を改善することができるのか、と質問をいただきました。

実際に日本の温浴経験者さんが中国の温浴施設の現場に入れば、こうした状況を改善したいと思うのはごく自然です。

現実的にはそれが可能かと言えば、可能だと私は考えます。

しかし、それが中国において合理的な体制づくりに繋がるかと言えば、正直難しいところではないでしょうか。

以前中国でサービス業の運営経験豊富な日本人老板と話をする機会があり、その際に思わず共感してしまったのは、4,000元の給与のスタッフに10,000元の給与を渡したからと言って、次の日から10,000元の仕事ができるようになるかと言えば、明らかにNOである、ということでした。

もう4,5年前の話なので4,000元という最低限の給与で話をしていたのですが、そうした一人一殺の業務を担当するスタッフは労働者が100人以上もいるような大型店においては、その4,000元の給与層が人数として最も多いピラミッドの層となります。

※以下は仮に4,000元スタッフを一般従業員、5,000元以上のスタッフを管理スタッフ、10,000元を幹部クラスとして話を進めてみます。(実際には地域差もあり、今の時代上海では4,000元はちょっと厳しいですし、幹部クラスも10,000元では集まりません。)

一般スタッフに明日から急に幹部スタッフ級の給与を与えたとしても、殆どの場合それに見合った業務を行うことができません。

決して能力的に劣っているだけの話ではなく、そもそも一般スタッフの場合彼らは4,000元の給与をもらう自分の生活やそのレベルの労働内容が適していると考えていて、向上心が欠如しているケースが少なくありません。

もちろん給与が上がれば嬉しいし、一時的には前向きな気持で勤務をできるかもしれませんが、それが一気に倍になったとしてもそれに見合った業務がすぐにできるようになる、というような、雇用者にとって夢のような話はありません。

幹部クラスの給与を得るだけの才能を持っている人材は、仕事に取り組む姿勢も含めてそれに見合うだけの気持ちを持っているのです。

では冒頭の話に戻って、日本と同じように一人のスタッフが3つも4つも多くの業務を担当するような体制をつくるのであれば、10,000元のスタッフ、即ち幹部クラスを大勢、最初から集めなければならないのです。

しかし幹部クラスの能力を有したスタッフなど、そうそう簡単に集められるものではありません

10,000元のスタッフ募集をしても4,000元や5,000元の能力しかない人材が応募してくるでしょう。

最も理想的なのは一般スタッフから努力を重ね、能力も給与も上昇し管理能力を身につけ、更に努力を続けて幹部と呼ばれるまでの能力を身に着けてくれることです。

ただ、それが簡単ではないことは日本でも同様でしょう。

また100名規模のスタッフが在籍するような温浴施設の場合、

4,000元の給与のスタッフが8割、4,000元~8,000元の管理スタッフが1割強、10,000元を超える幹部クラスが1割弱。

多くの場合はこんな体制になると思いますが、一般スタッフが当然最も人数が多い層になります。

4,000元 ✕ 80名 ≒ 320,000元

320,000元 ÷ 10,000元 ≒ 32名

30名の幹部クラスの人材を集めることがそもそも困難ですが、30名の幹部クラスが働いて80名の一般スタッフの穴埋めができるでしょうか。

同じ人件費であってもスタッフ数が1/3に減少し、労働時間の問題もあれば幹部スッタフの中でも退職者の出入りがあるでしょう、給与の上昇があれば費用負担は嵩んでしまう可能性も高いでしょう。

費用だけの話ではないかもしれませんが、そこまでのメリットがあるのか、という点が最も難しい点です。

温浴施設の場合、どうしても清掃や洗濯などの雑務も多くあります。

現実的な話ですが、10,000元の給与を支払っているスタッフがゴミ拾いに数時間も費やしているようでは、それこそ無駄な労働力になりかねません。

先述の通り、給与だけでは労働力を推し量れるような単純な話でもありません。

日々修繕、日々清掃を積み重ねる温浴施設での労働体制には、人海戦術が必要になるシーンも少なくありません。