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2020-11-02
日本料理のマニュアル。

私は滅法料理を作ることが苦手ですが、食べるほうは得意です。

以前の日本料理店の経営に携わったことがあると紹介したことで、いくつか興味を持ってもらい問い合わせをいただきました。

当時、とある中国人の投資家さんと興味本位で始めた飲食店の投資でしたが、私の出資額など本当に知れたもので、名前を貸すようなイメージで経営に携わった程度ですが、経験としては大変面白いものでした。

何人かの中国人オーナーと別件でお仕事をさせていただいたことで、一緒にやろうと誘われたのがキッカケで、一時はドップリと勉強しましたが、方向性の違いもあり出資から手を引くことにしました。

出資額の桁が違うので、ケンカ別れという訳では決してありませんでしたが、彼らの方向性と私の感覚とは大きな隔たりがあったのも事実です。

中国人オーナーが考える日本料理店の料理で最も大事なのは、あくまで見栄えでした。

その辺から価値観が異なることは意識していたのですが、その手法も極めて強引な物でした。

日本からツテを辿って日本人料理人を雇い入れましたが、中国人オーナーの考えは彼を利用してマニュアルと作らせようということ。

中国人オーナーは料理に限らず、まずは最初に専門家を呼び寄せておいて、彼らのノウハウからマニュアルを作成させて、最終的には賃金の安い中国人スタッフのみでやらせようという発想はいろいろなシーンで見聞きします。

しかし、実際に専門家が現場を離れると、すぐにその品質なりクオリティはほとんどの場合維持することができません。

そして結果的に専門家の意思は徐々に尻すぼみに影響力を失くし、残った中国人の独自性ばかりが前面に出てしまい、専門家はいったい何だったのだ、となるケースが非常に多いです。

日本人の料理長に中国人の腕はどうか、と聞くと、上手とか下手という基準ではなく中華料理と日本料理は根本的に全く異質なもので、中国人は大きな包丁で大胆にさばいて、大きな鍋にバシャバシャと放り込んで手際よく完成させることが評価されるような価値基準。

手際もいいし、包丁さばきも上手だが、そもそも日本料理は大根のツマや飾り細工などに代表されるように、細かい作業が絶対的に必要、全く異質なものなので、それを理解できる人は元々の経験もあるので、僕も驚くほどすぐに上達する、とのこと。

料理も我々の仕事も一緒だなあと強く感じさせられましたが、何事も根気よく粘り強く絶え間ない努力が必要だということを分かっていない投資家が多いのも事実。

中国人オーナーと出資するような場合は是非気をつけられた方がいいことをアドバイスとしてさせていただきたいです。