中国に10年以上住んでいますが、未だに理解できない中国人の行動心理はたくさんあります。
ただ、日本人同士での付き合いでもなかなか互いを理解できないこともたくさんある訳で、哲学的な話になってしまいそうですが、殊更、人種や国籍を超えて、お互いを理解するということは簡単ではありません。
弊社では温浴施設のコンサルティングをする中で、日本企業だけでなく中国企業も多くお付き合いをさせていただいております。
今回も難しい話にするつもりはなく、そんなことを考えながら、実際の中国での経験を踏まえて、書いていきたいと思います。
5年ほど前に設備納入の目的で商取引をさせていただいた、中国の国営企業が一部投資をしている企業がありました。
蘇州市の阳澄湖という上海蟹の産地として有名な湖のほとりにある、敷地面積で3万平米ほどの温浴施設案件です。
日系の大手設計事務所さんが計画に参与されていたことからご紹介を受け、設備納入に至りました。
日本の設計会社やメーカーが参入する案件は、中国企業のみで計画されるものに比べ投資が大きくなりがちです。
それでもなぜ中国人オーナーが日系企業を選択するのか、それは良い施設をつくりたいからです。
良い施設には当然投資が大きくなりますし、メーカーとして動くには日本人が絡んでいる案件というのは少し安堵感があるのも正直なところです。
なぜならクライアントが良い製品を求めていれば、ライバルとなる中国ローカル企業に比べて優位性があることが明白だからです。
それはさておき、紆余曲折ありながらも設備メーカーの立場として製品納入の悲願を達成するわけですが、ここには大きな矛盾も生まれることがあります。
それは先述のように、クライアント側は良い施設にしたい、良い製品が欲しい、高い収益を出したいと考えているのですが、計画性が甘すぎるのです。
大手設計事務所が付いているので、当然計画は素晴らしいもので、出来上がった施設も高級感に溢れた素晴らしいものでした。
しかし、フタを開ける前から分かってしまっていたのが、その後の運営に課題があることです。
施設を完成させるまでに大きな投資をしてしまうと、今度は運営の規模を縮小させることに一生懸命になってしまうのです。
あれだけ計画には高級志向を目指していたのに、客単価の設定や客数、その後のコスト感覚が全く無いようでした。
設計事務所さんとコミュニケーションを図っていても、オーナー側の要求ばかりを聞き続けているので運営コスト、運営後の収益管理ができていないことを危惧をしていて、まさに我々が心配した通りになっていったのです。
悪い言い方をすれば、身の丈に合わないような豪華な計画を続け、開業してもかさみ続けるコストに運営収益が全く合わない結果になり、結果として約3年ほどで倒産をしてしまいました。
綺麗事を言うつもりはありませんが、規格、スペックなどを全て提示しつつも、心のどこかでは様々なことを懸念しながらだったので、自分が関わった案件がこのような結果を招いたことは残念でしかなく忸怩たる思いも当然あります。
ただ、言い訳をするわけではありませんが、冒頭のように閉鎖から3年近くが経った物件ですが、建物の景観はかなり優れた状態のままで、勿体ないとさえ思わせられるほどでした。
その後の運営はさておき、日系企業の優れた技術は焼け野原と化した現場でも生き残り続けていたのは、紛れもない事実でした。
こうした経過から私自身が温浴施設の設備部門のコンサルティングを志した理由の一つでもあるのですが、我ながら思うのは、この一般的に中国人、中国企業の計画性の乏しさと日本人の強い計画性は相性としてマッチしているということです。
中国企業の優れている点は、やや強引でもありながらも、その決断力。
一方でそうした決断力は日本人に欠けている部分でもあります。
資金を出しているのが中国企業側の場合、コンサルティングに入った日本企業がマウントを取られてしまい優れた意見を反映できないケースも少なくありませんが、それらの背景を抜きにすれば、日本と中国の互いの欠点を補完し合うことができるのではないか、と私は考えています。
温浴施設、レストランなどの娯楽施設の計画、運営は是非経験豊富な弊社まで、お気軽にお問い合わせください。