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2020-10-31
日本でのプライドと海外で成功をすること。

顧客である50代の経営者の数人と交流する機会があり、深く様々なことを聞き勉強になる機会となりました。

多くの経営者が長期間企業を維持するのに苦労をすることを考えれば、起業して10年20年と年月を重ねるごとにそれぞれの経験談には深みが増し、代えがたい価値があるものです。

私がハッとさせられたのは、先日とあるプロジェクトで、クライアントから条件のいい話ばかり聞かされ、知恵を提供させられるばかりで実際の契約の話は避けられるのでお断りをしたことがある、と話したところ、ある経営者からはそれは勿体ない、我慢が足りないよ、と諭されました。

そのA社長は普通に話をしていると激情型でもあり、非常に熱意の強い経営者なのですが、ビジネスの席では絶対に感情を表に出さないことで有名です。

A社長が言うには、自分が若いころはバカになって這いつくばってでも仕事に結びつけることが大事だったから、プライドは捨てなさい、そう教えてもらったような気がしました。

一方でA社長の中国事業は、そんなビジネスに対して温厚な彼の性格が災いしている部分が少なくないと感じていて、逆にその点はしてきさせていただきました。

また別のB社長も日本では私の大先輩ですが、彼の場合は中国でのクライアントの考え方が、自分の中でどうしても理解ができず苦労をしているということでした。

B社長が接触していた浙江省某所のプロジェクトで自社製品の販売を無事受注できたものの、段階を経てクライアント側の課長、部長、社長側近とそれぞれと打ち合わせしたものの、それぞれが言うことが異なるため、いちいち仕様変更をさせられて赤字になりそうだった、というのです。

結局、変更に変更を重ねたお陰で、納期に間に合わず罰金を払わされて怒れてしまったということでした。

このA社長、B社長に共通するのは、私流に言えば契約書が甘すぎるということ。

A社長に関しては支払いや職務内容に曖昧な表記が多く、B社長に関しても期日や変更回数などについての規定が曖昧であったこと。

日本では大した金額や内容でもないような、契約なのに、中国ではとんでもなく分厚い契約書になることがあります。

また、両者とも中国語が話すことができず、文書での抗議や意見や報告書にも曖昧な表記が目立ちます。

明らかに日本語から中国語に変換したような内容で、中国の顧客からすれば、一体この日本人は何を言いたいのだろうか?といったレベルで、心に響くものがありません。

もちろん原本の日本文を見れば、両社長が企業として毅然とした対応をしていると感じるものなのですが、それでも中国語に取り替わった文書は全く中国人に響く内容ではないのです。

また、俺は今までこうやって日本で成功してきたんだ!というプライドが邪魔しているようにも感じてしまいました。

プライドは企業として絶対に必要なものだと私も思いますし、彼らはそれを根幹にして成功を収めたことは紛れもない事実です。

しかし、そのプライドが日本でしか通用しないことも多々あるのも、残念ながら事実なのです。

言いたいことはハッキリという、争うことは徹底的に争う、こうした対応は中国では絶対的に必要です。

ズボンの尻ポケットに財布を入れていれば盗まれるし、クレジットカードを落とせば交番に届けられる可能性が低い社会で、性善説的なプライドでは通用できない部分が必ずあるはずです。

もちろん、顧客の中には日本人のプライドを理解する社長も絶対数いますが、それでもそれだけ中国で成功を収められるかはまた少し別問題です。

成功を収めたいのか、企業として、日本人経営者としてのプライドを大切にしたいのか、この点は根本的に非常に大切であると私は感じています。