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2020-08-22
支払い遅延と営業ツール。

お付き合いのある企業様で特定できない範囲でブログの記事にしていいよと許可をいただいたので、一例として少しばかり書かせていただきます。

とある中国企業のことなのですが、ここのD社長が営業的に日本人が必要だということで、弊社がスポットで営業サポートをさせていただいております。

日本人の肩書を利用して営業を進めるタイミングでお手伝いをさせていただいているのですが、今まで拝見しなかった財務状況を色々とヒアリングし、色々と分かることがでてきました。

こちらの会社さん、3つの取引先へサプライヤーとして商品を提供しているのですが、A50:B25:C25程度の割合で、A社が最も太いパイプでつながっている主要取引先という状況です。

しかしこのA社、元々支払いサイトが悪いことに加えて、コロナ禍の影響を受け、その支払いサイトさえも遅延が起き始めているようなのです。

正直に言って小さなD社長の会社ですが、A社と取引をさせてもらっているのはほとんどこの支払いサイトを受諾できるかの有無であり、私からすれば脅迫めいた取引の下地が存在しています。

しかしながらA社の取引額がこのD社長の会社の収益の50%を占める訳でもあり、D社長は人質を抱えたような状況で常に取引を続けているようなのです。

本来、通常の支払い条件であるB社、C社、もしくは新たな企業との取引拡大、もしくはA社との取引を減額していくことがD社長の会社にとっては最善の手立てなのですが、どうしても営業力がないためリスクの高い取引を続けている状況を打開できていないようでした。

今回のコロナ禍でよりリスクが高まったD社長ですが、A社との取引は生命線であることも事実で、変わらずその支払い条件を受け入れているため、さすがに危険じゃないかとアドバイスをさせていただきました。

ところが、D社長の回答はこうでした。

A社との取引にリスクがあることは事実だが、今こそそれにしがみ付かなければ、今回のコロナの影響を乗り越えることができない。それに支払い条件を飲み続けることでA社からの受注が留まることがないのだから、A社に感謝こそすれど取引を減らすことなどありえないよ。

確かに中国では性悪説の考えの根本の元、取引において甲乙双方が人質を抱えたままであることが少なくありません。

取引先へ支払い交渉をするときに、一担当者からなかなか決裁のサインをもらえなかったことがあります。

この一担当者、全く製品のことも知らないのになぜ渋るのかといえば、知らないからこそ、決裁をしてしまったら責任を自分が取らなければいけなくなる、という考え方があるからでした。

また、支払いを済ませた後に製品に不備やメンテナンスが必要になったとしても、支払いを済ませてしまった業者は誠実に対応をしてくれない、などといったここでも究極の性悪説が存在する矛盾があるのです。

支払いに煩い業者から支払いを進める、という現地駐在員の合言葉のようなものがありますが、これは確かに事実です。

最初の現場担当の窓口さえ通過してしまえば、大きな企業であればあるほどその上層部がわざわざ実態を把握して決裁することがないからでもあり、末端の担当窓口は自分の業務に支障が出るほど催促を受ければ決裁をせざるを得ないからでもあります。

これはもちろん担当者や企業の形態にもよりますが、あながち誤りでもないのです。

さて、こうした状況の中D社長は一向に考えを改めることなくA社との取引を続けるのですが、D社長の言葉にあるように、それでもA社に感謝をする、というのは、リスク回避が最大の課題でもある我々にとってはなかなか逞しい考え方でもあります。