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2021-10-27
恒大不動産問題が中国企業に与えた影響。

精力的に中国で動いていますが、やはりそれぞれで話題になるのは恒大不動産に発端する経済状況。

私のいる中国の温浴業界は大きな括りで言えば、開発、その先は不動産業界です。

サービス業に関連付けられるほとんどの根本の部分は投資開発、そして不動産業になるのが常です。

様々な中国企業のトップ、幹部の方々と接触をして景気状況を聞いていても、彼らは恒大不動産自体が与える市場に対しての強い影響を肯定しません。

なぜなら、中国における不動産業界は既に厳しい状況が続いていることを、以前から分かっているからかも知れません。

企業のトップとの会話の中では、彼ら自身の強がりもあるでしょう。

恒大不動産は香港市場の上場会社であるということや、不動産業界自体に対するあれこれ、様々な考え方を聞くことができましたが、総じて言えることは以前のようにイケイケドンドンな経済状態ではないという結論です。

不動産業界が何でもかんでも建物を建てれば売れる状況にないことは周知の事実で、これからは当然付加価値やその本質が見極められるような消費者心理が働く可能性が強いとも言えます。

新しい中国市場の始まりである、というのは強気な言い方かもしれませんが、変化を伴っていることもまた事実です。

温浴業界で最も大事な個人消費に目を向けると、やはり未だ上海では根強い人気を誇り、特に11月に向けて気温が低下してきたことで入場者数は増加の一途を辿っているような状況です。

ただ、気になるのは客単価。

以前から私個人的にも感じていましたが、入場料で150元(2,250円)近いような金額は正直あまりにも高すぎます。

150元を払って3時間、4時間と滞在する層にはまだ受け入れられる金額かもしれませんが、重要なのは館内で他の消費がされにくい細かい部分、ミクロ経済の詳細です。

先日中国国内でホテル運営をする、とある中国企業の総経理と食事をする機会に恵まれました。

中国で様々な講演会などで示されたり何らかの政府機関で明示される指標には信憑性の低い曖昧な数値も多いのですが、彼は現場からの明確なデータを持ってこう言っていました。

国内旅行をする人数は明らかに増加していて、都市部だけでなく観光地のホテルも週末にかけては、ほとんどの施設が満室になることが当たり前になっているが、客単価は明らかに低下していて利益率が非常に悪化している。と。

若年層は旅行に行くのにスマホでお金を借りて旅行に出かける事が多い、そしてそれらを返済できない状態が多々起きている、そんな決して芳しくない状況での旅行先で客単価が上がるとは到底思えない、とも言っていました。

コロナ禍の影響で世界中の人々がストレスを溜めています。

感染者数だけがストレスを与えるのではなく、行動に自由がなかったり、経済状態の悪化から多くの人の再就職も厳しくなっているでしょうし、給与や待遇が上向きにならない状況は当然あるわけです。

日本の温浴施設はある種生活の一部に近く、景気動向に左右されにくい業界ですが、中国のそれらはレジャー色が強いです。

一般的に客数が伸びればそれだけ単価は下がります(マッサージや食事などの利用率が下がるため)。

しかし、旅行に出掛けたりお風呂に入りに行くだけの資金はあるが、館内で消費を控える傾向があるというのは、また別の重大な問題が存在しているとも言えるかも知れません。