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2020-07-09
性悪説と証拠。

過去の事例ですが、とあるメーカーさんからのご依頼で裁判を見守る機会がありました。

内容としては良くある話で、メーカーさんから製品が納められているのに、支払いがない、という典型的、と言ってはなんですが、中国ではよくある訴訟でした。

プロセスから結果までを振り返れば、原告が圧倒的有利な訴訟でしたので、裁判前の調停で諦めて支払いをしてくれることを望んでいました。

こうしたケースの場合、泥仕合になり、原告側からすれば悪戯に時間だけが引き延ばされる不毛な争いであることが多いのですが、このケースでも裁判にもつれ込むことになってしまいました。

性悪説の話は過去にもしたことがあるかもしれませんが、日本と中国の商習慣、いや元を辿ればそもそも人種としての最も大きな考え方の違いは性善説か性悪説か、ということです。

原告側の準備としては、製品に不備がないことの証明です。

弁護士さんと相談しながら淡々とある情報を示して、共有していきます。

裁判所は中立(であるはず)なので、これが最も大事なことでしょう。

一方、被告側が取った手段は、原告側の担当者に電話を録音していたことです。

正直に言って被告側の担当者はおろか総経理クラスの企業の代表者も原告側の製品については認めている発言をしていて、書面にも不備が全くない状態、どう客観的に見ても明らかに原告有利な状況でした。

その担当者への電話録音は製品不備を証明するために法廷でも流されました。

具体的には示すことができませんが、一方的に誘導をして製品に不備があるかのような言質を取る目的の会話です。

結局第一審の初日ではその録音が決め手となり、圧倒的有利な原告の状況が変わり、裁判所より現地調査を行うよう指示をされました。

その後は現地調査で技術的な、というよりは、原告の製品自体と関係のない製品周辺部分の環境を整えて完了、再開された裁判では全面的に原告の主張が認められ、被告は支払いに応じることになりました。

被告としては別に原告にだけ支払いをしていないわけではなく、多くの他社に支払いをしておらず、これに関わらず単純に先延ばしをさせるだけの、大変迷惑で狡猾な手段でした。

証拠集めは原告にできる最大の手段ですが、裁判中の相手からの連絡に応じないよう周知徹底することまではなかなかたどり着くことができませんでした。

相手が絶対不利の状況で一体何を企んでくるのかを、性悪説の立場に立って対策するのは、何となく企業として残念なことのように感じますが、中国市場で戦っていく以上、大変重要なことと言えそうです。