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2021-10-15
大都市でないと中国の温浴施設は成功しないのか。~借地代からの考察~

今から20年近く前に上海に大型の韓国式スーパー銭湯ができました。

それから更に10年後に上海市で日本式のスーパー銭湯である極楽湯ができました。

それぞれ今を持って尚、大きな人気を誇る施設ですが、どちらともに中国の大都市出店がメインです。

上海市、北京市、青島市、武漢市といった一級都市、長春市などの二、三級都市でも出店の情報がありますが、やはり話題性やその人気ぶりは一級都市、特に超一級都市である上海市でのものが多いのが実情です。

ではなぜ上海市なのか、恐らく私の感覚ですが、上海市では北京市やその他の都市と比べて、比較的新しいものを受け入れやすい国民性が強いのではないかと察します。

港町であり、歴史的にもそうした民族性、市民の特徴があるかも知れません。

もちろん外国人が多いこともありますが、ただ顧客ターゲットとしてはやはりメインは中国現地の人々なので、外国人が与える影響はそこまで大きなものではないと感じます。

それからやはり大都市に出店をすることは、ニュースになりやすく注目を集めやすいという点は当然挙げられるでしょうし、前提として人口密度が高いのも売上が上がりやすい構造であることは当然です。

しかし、借地代が高いのがその反面でのデメリットになるでしょう。

そのため、上海市での出店はハイリスク・ハイリターンであり、その他の都市ではローリスク・ローリターンになりやすいはずですが、それでも地方都市での成功例はあまり聞き及びません。

上海郊外での借地代は1万平米を超える施設となると、安く見積もっても2元(30円)/m2/日~となります。

1万平米として計算すると、一日あたり2万元(30万円)となり、1ヶ月では60万元(1,000万円)、年間で720万元(1億800万円)となります。

2元単価といってもこれは格安な方で、地図にある上海市区の若干外側、中環状から外環状の間あたりで、ようやく探し当てられるかというところでしょう。

それだけでも施設にとってはかなりの負担であることが分かっていただけるかと思います。

では地方都市ではどうなのか、先月訪れた南京市で聞いた話だと、同じく(かなりの)郊外では0.8元~、市内では2元/m2/日(約12円~30円)を超えてくる程度だといいます。

表はマンションの販売価格相場。

海で温浴施設を出店する立地の相場が1.5元/m2/日~(22.5円)程度と考えれば、上海よりは若干安くはなりそうですが、決定的に南京市が安いとも言い切れません

というのも、次に人口密度を調べてみると、それぞれの地区によって大きく異なりますが、例えば上海の中心部では2万人/km2を超えていて、先述の家賃相場である2元相当の地区でも1万人/km2弱程度の人口密度となります。

当該地区には1万人弱/km2の人口密度しかないものの、車で30分圏内には2万人/km2を超える人口密度を誇る地区もターゲットとなり得る訳です。

一方の南京市は市内中心部の玄武区、秦淮区、鼓楼区、建邺区、雨花台区で1万人/km2を超える規模ですが、これら4つ区は南京市内のごくごく中心部で、この場所では2元/m2/日を大幅に超えてしまいます。

借地代を2元の目安で考えると、その周辺地区となり、人口密度は多くても5,000人/km2程度の立地となります。

南京市は江蘇省の省都であり、人口規模も高い一級都市なので所得水準もかなり高いレベルではありますが、借地代としては上海のそれよりは若干安いかもしれませんが、人口密度ではやはり上海市に大きく分があることが分かります。

南京市の所得水準も上海市の水準ではなく、上海市郊外と比べても土地代にかかる費用はほとんど変わらず、人口密度が半分程度となれば、ハイリスク・ローリターンに近いモデルになってしまう可能性があります。

日本のスーパー銭湯のビジネスモデルは所謂「安・近・短」と言われますが、レジャー色の強い中国でのスーパー銭湯は、面積が大きいことはもちろん、広範囲から集客をすることが求められるため、距離を伸ばした周辺地区の人口密度も考えなければいけません。

そうなると立地自体は上海市のかなり郊外のであっても、人口密度の高い上海の中心部からお客さんを呼び込むことができれば、かなり大きな商機となりやすい訳です。

また、今回は例として南京市を取り上げましたが、南京市は中国三大竈(かまど)と呼ばれるほど暑い地域なので、寒い時期に集中して集客が望める温浴施設は南京市には若干不向きではあります。

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