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2020-12-19
中国のコーヒー文化と瑞幸咖啡 luckin coffeeの営業戦略。

今回は外側から読み取れる範囲でしかありませんが、その営業戦略の凄さを紹介していきます。

2012年ごろから1年のほとんんどを中国で暮らすことになってから、多くのことが変わりました。

経済の発展やIT分野の発展、人々が裕福になり、何がどうというより中国の生活環境の全てが変わり続けています。

私の好きなコーヒーを飲む、という文化も大きく変遷を遂げています。

2010年以前も中国と何らかのかかわりを持ち続けていた私ですが、コーヒーを飲む、という文化が人々に受け入れられるようになったのは2015年前後ではないかと感じます。

スターバックス、ロンドン発のコスタカフェができて、人々の間でコーヒーに対する認知度が高まったこともそうですし、日本と同じ規模のコンビニやスーパー内でもコーヒードリンクやインスタントコーヒーが見つからなかったそれまでから、今では様々な種類のそれが店頭に並ぶようになったのもその時期ではないでしょうか。

特に出張に出かけるようなとき、コーヒー中毒の私は必ずと言っていいほどインスタントコーヒーをガラス瓶で持ち歩いていました。

ホテルや、お客さんのオフィスに行けばお湯を提供していただけるので、そのインスタントコーヒーさえ持っていれば、安らぎの時間を得ることができるのです。

そんなふうに持ち運びに不便なガラス瓶を持ち歩かなければ、コーヒーを飲むことさえできない世界だったのです。

ところがスターバックスの隆盛、そしてこの2、3年での瑞幸咖啡が彗星のように現れたことで、人々がコーヒーを片手に商談をしたり、ソファーでくつろぐシーンが所々に現れるようになったのでした。

さて、話が長くなりましたが、この瑞幸咖啡の発展の肝は何だったのかという点です。

まず一つ目は、広告塔の存在です。

正直日本人の私と言えど井崎英典氏は存じ上げませんでした。

しかし、それはそこまで大事なのではありません。

中国においてのこうした広告塔(悪い意味ではなく)は、あくまで有名である必要性はなく、偉業を成し遂げたことと、外国人であると言う稀有なインパクトこそが大事なのです。

イタリア人のアンドリュー・ラドゥワス氏にとってもそうです。

両名が偉業を成し遂げた人であることは当然素晴らしいことですが、凄い人であることは企業が冠を被せることができるので必ずしもその時点での認知度が必要な訳ではなく、その人、インパクトそのものこそが大事なのです。

極端に言えば、すし屋であれば日本人、パスタ屋であればイタリア人、文字通り広告塔であれれば最低限それで良いかもしれません。

瑞幸咖啡は文字通り広告塔を用意し、認知度の高い中国人俳優もCMなどで同時に起用しています。

認知度の高さを中国人俳優が担い、何か凄そうというブランドイメージを井崎氏やアンドリュー氏が担った訳です。

次に特筆されるべきは、その発展の速さと店舗形態です。

正直に言って創業者がどのような理念を持って始めたかは分かりませんが、スターバックスが中国人にコーヒー文化をもたらせたことで、需要の下地を感じたのかもしれません。

一方で店舗の形式はそれとはまったく異なる方針で臨んでいます。

スターバックスが100m2、200m2とコーヒーショップとしては大型で、むしろ居心地の良さやスペースを提供することが主体であることと異なり、瑞幸咖啡は15m2、20m2とごくごく小さなスペースしかありません。

カウンター内で注文を受け、完成品をカウンターに置き、渡すという最低限のサービス空間しかありませんが、単純比較で価格はスターバックスの半分です。

これにより当然出店ペース、出店リスクはスターバックスのそれよりも軽く、早いものになります。

3つ目は独自のアプリケーションによるものです。

これは特に私のようなビジネスマンにとっては大変助かるのですが、アプリでささっと注文ができ、支払いを済ませると、出来上がりのタイミングでその店舗に訪れるだけで商品を受け取ることができる、究極の時短の出来上がりなのです。

例えば私のオフィスにも1Fに瑞幸咖啡がありますが、駐車場でアプリを開き、注文、荷物を整理して車から出て歩いて3分、店舗に辿り着くと同時にコーヒーが出来上がっていて、後は受け取るだけです。

これが中国人の生活リズムに合うかは分かりませんが、少なくとも私にとっては手軽で、タイムリーで、安価であるメリットは大幅にスターバックスを上回ります。

同じく会社の外ではありますが、歩いて1分も掛からない場所にあるスターバックスは、丁寧にスタッフが一人一人を相手にしているため、行列がとんでもなく、朝からとても並ぶ気にもなりません。

需要とその方式の差異によるとは思いますが、少なくとも私はこのシステムが合っています。

広告塔の活用、出店スピード、ライバル店の模倣・差異、これが瑞幸咖啡の成功の秘訣です。

そしてこれらの成功例は特に我々日本企業が不得意とし、学ぶべき点であるのも間違いありません。