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2021-01-22
中国における介護業界。

私が中国でビジネスを展開してから10年近く経過しますが、これからはこれが儲かると言われ続けている業界が2つあります。

1つは不動産業界。

これは10年前は確かに魅力的だったかもしれませんが、今はどうでしょう、生活に密着した業界でもあるため、注目こそ続くでしょうが不安定でもあり、売買目的の投資としての価値は以前よりもかなり落ち着いていることも確かでしょう。

そしてもう一つは介護業界です。

中国は日本と同じように、いやそれ以上に少子高齢化が喫緊の課題でもあり、近年では孤独死という言葉も出てきています。

しかし常に盛り上がりを見せている不動産業界と違い、介護業界はなかなか景気の良い話が聞こえてこないのです。

先日上海近郊の昆山や蘇州などで、介護業界を営んでいる経営者のW社長に話を聞く機会がありました。

W社長がなぜ私に辿り着いたかと言えば、日本の介護モデルは非常に理想的でアイデアを積極的に取り入れたいという趣旨のものでした。

まず率直に私も冒頭のような話をしつつ、どうして介護業界には盛り上がりが見えないのかと尋ねました。

答えはとても簡単でした。

まず上海などの都心部では確実に需要があるはずなのに、両親を介護施設に入居させることへの抵抗感は未だ根強く残っていること。

W社長が言うには、こうした考え方が中国での老人の孤独死を招いていて、介護施設に入居をさせるのは親不孝だという考えが支配する一方、自分自身の生活もいっぱいいっぱいで、結果的に面倒を見ることができず、孤独死を迎えるという悪循環を生んでいると強く主張されていました。

投資側からすると、日本のように政府からの援助が極めて少なく、どうしても独自で収益を上げなければいけないビジネスライクな考え方が先行してしまうことが課題です。

そのため、需要があるはずの都市部は地代が高すぎ収益が立たず、たとえ都市部に展開したとしても一般人には費用が高額になりすぎて、負担ができないというのです。

確かに市内のマンションが一部屋3,000元や4,000元もする相場の中で、付帯施設と投資に見合う収益を含めれば平均月収に近い費用になることもあり得ます。

結果として、需要はあっても市街地から遠く離れた場所にしか展開できず、どうしてもやむを得ないと切羽詰まった人々が、費用も少なく済む郊外型にやっと入居を決めるというケースが多いようです。

しかし、当然このようなケースではビジネス収益を重視するあまり、コスト削減が第一義、とても質の高いサービスや介護職員を備えられません。

一度地方の介護施設の前を通ったことがありますが、無機質なコンクリートのビルにボロボロの衣服が干されていて、それが介護施設であると後々気が付いて悲しいというか寒気を感じたことがありました。

政府からの支援もなければ投資側もメリットを見いだせず、ただただ地代が安い場所を求め、劣悪な環境でしか施設を成り立たせることができないようです。

法が整備されれば動くのは早い中国ですから、今後それらの課題がより明るみになれば再び投資家としても入居させる側としても注目が高まるとは思いますが、W社長が言うにはまだまだもう少し時間がかかりそうだとのことでした。