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2021-07-16
一人一殺の業務内容は温浴もそれ以外も一緒。

中国で長く仕事をしていると、中国には雇用についての考え方も、日本とだいぶ異なることを感じます。

何が正しいかは分かりませんが、日本では事務員さんが請求書を作成すれば電話対応をして、来客者にお茶を出したり、場合によっては営業についての電話応対や、見積もりのそのものを作成したりするようなケースがあります。

先日お邪魔した企業さんでは、失礼ながら普通の事務員さんかな、と思っていた方が、お茶を出して見積もり作成の指示を受けていて、更には工場で製品テストに立ち会ったりしているので、この方は一体何の業務担当なのかと思っていたところ、「実は彼女は設計担当なんです」と言われて驚いたことがあります。

一方で中国企業では、事細かに部署が区切られているケースが少なくありません。

営業部、技術部、規模が大きくなれば財務部、人事部、総務部などなど。

ここまでは当たり前と言えば当たり前ですが、日本で社員10名、30名規模の中小企業であれば財務部やら人事部などをわざわざ設置することなく社長が自ら携わる事も多いはずで、財務も総務も出納と分別することなく事務作業者として雇用する場合も多いでしょう。

もっと大きな企業になると、購買部はまだしも、コスト部とか、行政部とか、聞いたことのない部署が数多存在します。

なぜこのように詳細に区分けするのかを分析すると、雇用契約書内には業務内容が明確化されており、雇用側がそれが当然だという考え方が根幹にあります。

日本でもNGですが、事務員がお茶を汲んで持ってくるのが当然だ、などという理論は中国ではより御法度です。

冒頭のように一人一殺の業務を推進するケースが多く、当然雇用契約書が法的根拠にもなるので、それに準じて雇用することが雇用主にも義務付けられています。

これらは温浴施設にとっても同様です。

日本の一般的な2,000~3,000m2規模の温浴施設では、社員が3、4名程度にパート・アルバイトで40~50名程度というのが一般的な体制です。

中国ではパート・アルバイトの概念が非常に少ないので、勤務は週休二日の全日制の雇用形態になり、温浴施設の面積も日本よりも大型のものが多く2倍~4倍程度の面積になりますが、200名近い従業員が雇用されるケースが少なくありません。

単純な面積比にすれば従業員数は変わらないように思えますが、日本のパート・アルバイトの場合週に3,4日勤務だったり、労働時間が短いことが多いものの、中国の場合は正社員になるため週5日の8時間労働が基本です。

繁忙期のタイミングやアウトソーシング(リネン、レストラン、マッサージ等)の状況によって当然異なりますが、ザックリと試算すると、日本の場合では館内の従業員数は300~800m2に一人くらいになる計算で、中国の場合は100~200m2に一人くらいの計算になるかと思われます。

それもそのはず、先述のように中国の従業員はレジ担当、接客担当、各エリアの清掃担当や雑務担当、守衛や設備担当、洗濯担当といった専門人員が、それぞれ別部門となって存在しているのです。

ひどい場合は脱衣所のドライエリアでお客さんにタオルを渡すだけの業務を淡々とこなすだけの従業員もいるほどです。(ただそれはそれで中国系の温浴施設では必須らしい)

各従業員はそれぞれの部門ごとの業務を徹底しますので、レジ担当が設備を操作し始めたり、清掃担当が洗濯業務を手伝ったりすることは稀です。

これはこれで合理的ではありますが、無駄な雇用が生まれやすいのも事実です。

能力のある人や熱心な従業員はリーダーとなって部門を管理する立場に回り、ピラミッドが事細かに設定されるのがこの雇用システムの最大の理想像なのでしょう。

様々なメリット・デメリットがある中で、個人的に考えるこの中国のシステムの最大の問題点は、従業員の可能性を摘んでしまうことがあるということです。

俺は設備担当だから、私はレジ担当だから、と言って業務に壁を作ってしまうことが少なくないということです。

確かに人はそこまで有能ではありませんから、実際は一人一業務くらいが丁度良いかもしれません。

一方で、本来は異なる部門を対応した方が能力を発揮できたり、場合によってはそれぞれの部門をそれなりにそつなくこなせてしまう、という人材もいるはずです。

また、横のつながりが希薄になるので、それは清掃部門の担当だろう、それは設備が担当するべきだろう、といった横のつながりが責任の押し付け合いになってしまい、真のサービスに繋がらない可能性が最も怖いところです。

組織がバラバラになるケースも少なくありません。

これは日本でも中国でも同様ですが、結局は有用な人材をきちんと評価し、人それぞれが持つ才能をきちんと見出してあげること、それがとても重要だと考えられます。