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2020-07-31
ギリギリセーフの契約書。

今回は私の過去の実話です。

昔の設備会社に勤めていた時の話ですが、まだ日系企業以外との契約に慣れていなかったとき、およそ7年前ほどになります。

とあるホテルに設備を納品する計画があり、2年ほど温めて四苦八苦の末、契約を結ぶことに成功しました。

あれやこれやと打ち合わせをしたのですが、中国企業との契約はまた新鮮なものがあり大変うれしかったのを覚えています。

その契約書が後に大変なことになるとも知らずに。

契約の前に施主のコンサル会社としてゼネコンを紹介していただき、その会社と契約を結ぶことになったのですが、今考えれば日本の設計会社が担当などをしていたので、ゼネコン一括請負だったのかもしれません。

窓口の担当者は施主側のトップと深いつながりがあるようで、何の打ち合わせにでも一緒になっていたので何の疑いもなくゼネコンとの契約を結んだのですが、もちろん与信も取らず、目の前の価格交渉でいっぱいいっぱいの末だったので、何の策も施すことがありませんでした。

設備は無事納入完了し、何の問題もなく試運転を終え、支払いはかなり遅延する者の私も徐々に施主のトップと関係性を持てたので、まあ大丈夫だろうと過信をしていました。

しかし開業後にもらえるはずの支払いが全く滞ってしまい、何度か交渉を重ねるときに、ふと思い出したのです。

我々の契約先が施主ではなくゼネコンであったことを。

慌てて紐ほどいてみると、何とこのゼネコン、完工時には既に企業として解散しており、実態がなくなってしまっていたのです。

よくよく考えると施工時にも契約先のゼネコン以外の施工業者が多く出入りしていて、騙されたのではと直感しました。

しかし施主のトップであるC社長とは良い関係性が構築できており、設備に何ら不備なきことも分かっていただいていたので、半年近い交渉の上一旦契約書を破棄し、第三者譲渡の契約として施主から直接請求できるように整え、その後無事支払いをいただくことができました。

C社長曰く、もともとそのゼネコンに出資をしていて、そのタイミングで自身の別の投資としてこのホテルを計画していたが、同時期にゼネコン本体が資金繰りの都合で株主間で揉めてしまい、結局当ホテルの施工も別の会社でやってもらうことにした、という経緯があったらしいのです。

最初から騙すつもりで契約書を結んだわけではなかったということでしたが、話をきいているとC社長もかなりのどんぶり勘定。

ゼネコンへの出資もこのホテルの収支計画も大変杜撰な状態で、実際に計画から施工の取っ掛かりまでは随分景気よく出資していたのですが、やはり工事途中で限界があり政府関係に増資をしてもらっていたようです。

更に結局完工前には再度、資金繰りが厳しくなってしまいかなり手抜き工事になったまま完工してしまったのでした。

正直立地も良く、超一級の観光地で当初は集客もそれなりにあったようですが、開業後の資金繰り計画に問題があったようで、強引な価格設定やコストを省きすぎたサービス内容から徐々に客足が遠のいてしまい、このコロナ禍にあって倒産してしまったようです。

先ほど知人からその情報が送られてきたのですが、自分のことだけを考えれば危なかった、良かったというのが素直な感想ではあります。

しかし一方でC社長が選んだいくつかの施工業者も評判の良い業者も少なく、それぞれが自分のことしか考えていないような業者ばかりでしたし、ある意味では知識がないことを手玉に取られてしまっていたようで哀れな気持ちにもなりました。

2,3年前に今行っている弊社の中国企業向けの与信サービスの一環で調査をしてみましたが、すでにC社長は失信人となっていて、支払いなどの滞りがかなりあったようでした。

それでも2,3年持ちこたえていたのでお元気かと心配していたところ、このようなニュースが飛び込んできてしまったわけですが、そのC社長も一説ではどこかに雲隠れしているそう。

連鎖破綻でいくつかの業者も立ち行かなくなってしまったと噂も頻繁にありました。

私はこうした雲隠れ、どういう方法があってどうやっているのか詳しくは分かりませんが、中国でやっていると、こうした実態があることも事実です。