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2020-10-04
とある温浴施設、北方暖暖温泉が成功したのはなぜか。

天内建築設計による企画設計が功をなした北方暖暖温泉。

それが成功したのは何も必然ではなかったように思うが、それでもなぜ彼らが成功したのかを順をだてて考えてみました。

まずオーナーのトップが北方温泉をプロジェクトしたのかといえば、政府の一員である老板による自己面子の一つでした。

私は何もそうした自己面子による成果物が悪だとは思いませんし、実際に年間10億円相当を売り上げる施設になりました。

単純に言えば6億程度で作り上げた施設が10億円相当の売上を記録すれば、単純な数字だけでしかありませんが、充分な成功例でしょう。

今回はその成功理由をダラダラと列挙していきたいと思います。

遼寧省瀋陽市は東北三省(黒竜江、吉林、遼寧三省)では最も栄えた都市であることは間違いなく、人口、経済ともに圧倒的です。

下地として温浴施設が受け入れやすい、冬の寒さが厳しい土地であることはまず一つ、初歩的で最大の理由です。

文化的なところもあり、瀋陽市の温浴施設は他の地域においては成功しやすい場所といえますが、反面土地代が高く失敗のリスクも高いことは勿論でした。

次はその立地、地下鉄が通る環状線の内側、大きな交差点の目の前、地下鉄の出口すぐ、と、立地条件もサービス業としては最高です。

そして、数ある遼寧省瀋陽市内において、初の日本式温浴施設というのはインパクトのある唯一のうたい文句です。

そこに起用された天内建築設計の適合性も高いのは言うまでもなく、視覚的に和風が強く全面的に押し出されれば、一度体験すれば忘れられないものとなり、宣伝効果も高いといえます。

それに、日本の娯楽=温泉というのは世界共通の認識といっても過言ではないほどで、日本式を成し遂げるのは中国人オーナーにとっては困難ですが成し得てしまえばこれほどインパクトがある温浴施設は他には有り得ません。

日本人が思っている以上に、日本に行ける中国人は限られていて、爆買いなどと面白おかしく報道はするものの、決して気軽に行ける場所では未だなく、それが身近にあることは相当な欲求に応えることのできる施設的な下地と言えます。

とまあ、プラス材料ばかりを揃えてみましたが、少しばかりリスクのある試みではあり、何らかの政治、経済的な理由で一転どうなるか分からない、と言われればそれまでですが、そのほとんどに言えることが、マイノリティへの選択です。

地方都市、地方的な娯楽、少数派の思考、少数派の需要、これらが積み重なって成功していると言えるような気が私にはするのです。